7代目亀とマサムネくんの 不易流行 

仕込みについて

原料米について

当蔵の商品はすべて高価格の酒造好適米『ひだほまれ』を100%使用しています。
主食としている飯米とは異なり、「酒米は大粒心白を以って最上となす」と言われる代表格とも言える
岐阜県が生み出した酒造好適米です。
これらは手間がかかる上に限られた量しか収穫できない、農家泣かせのお米でもあります。
『ひだほまれ』で醸したお酒は、どの銘柄にも後味に微かな苦みを感じるのが特徴で、
これが苦みのあるお料理によく合います。
また、国内の品評会などでは、この苦みを特徴と捉えず、欠点と捉える傾向が強いです。

仕込み水について

位山山系伏流水(軟水)である高山公共上水道を利用しています。
上水道と聞いて、幻滅するのはナンセンスです。
井戸水を仕込み水にしていると聞くと聞こえは良いですが、そのまま使用することはなく、
当然、塩素消毒の過程を踏まなければなりません。(法律で定められています。)
当蔵のある高山旧市街地区は伏流水を飛騨一之宮で取水するライン出来ており、軟水で、
酒の色や味を壊してしまう鉄分の含有量は少なく、仕込み水として申し分のないものです

精米歩合について

「精米歩合は低いほど高品質」と一般的に思われているのは、精米歩合の低い吟醸酒などに高価なものが多いところから来ているのでしょう。
精米歩合が低くて美味しくないお酒も、歩合が高くても美味しいお酒もあります。精米歩合は低いほどに「高品質」です。
原料白米100kg作るのに必要な玄米数量は精米歩合70%なら143kg、60%なら167kg、50%→200kg、40%→250kg、30%→334kg。
30%にまで磨きこめば実に精米歩合70%比べ2.33倍の玄米が必要ということで、必然的に高価なお酒になります。
酒の品質を精米歩合だけで語るのは、あまりにも乱暴です。品質に影響を及ぼすものは、
原料米そのものの品質、製品設計、精米から始まる原料処理や醪(もろみ)の管理、上槽(搾り)、貯蔵出荷管理などなど、多岐に渡ります。
IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2014において精米歩合70%の普通酒(アルコール添加あり)の古酒が頂点に立ちました。
受賞するまでほとんど見向きもされずに極めて低下価格で売られていました。
このことからも分かるように、精米歩合は品質を左右する要素の1つに過ぎず、
                             求める酒質に対して”適切な”というキーワードが抜け落ちている、と考えます。

製麹(せいきく)について

酒造りで最も重要なことは…如何に強い麹(こうじ)を造るかにかかっています。(仕込み水ではありませんよ(笑))
「一麹、二酛、三造り」と申します。原料米とこの麹でお酒の骨格が決まります。
酵母による違いはこれらに上塗りする、人間に例えるなら服や化粧をイメージすると分かり易いかと思います。
麹は個体(蒸米)にカビを生やしたものなので、毎回条件を統一することが難しく、研究は進んでいません。
この麹米を造る作業を”製麹せいきく”と言います。当蔵ではじっくり手をかけて、強い麹を育てています。

路地放冷について

蒸米を目標とする温度まで空気によって冷却しますが、
現在は多くの製造所(醸造所)で冷却機による強制通風を行い、急冷していることが殆どです。
当蔵では昔ながらに布の上に蒸米を広げ、ゆっくりと自然冷却をしています。
この”ゆっくりと…”が非常に重要で、温度だけ目標の品温になればよい訳ではありません。
熱々の蒸米を仕込温度まで冷ますために天竺布の上に広げ、均一に冷めるように何度も手を入れ、
天地を返しあr、塊をほぐしたり、手間のかかる作業を普通酒に至る全ての銘柄で行っています。

醸造アルコールについて

醸造アルコールをいわゆる食品添加物と同列に見なして毛嫌いする方が多く見えますが、当蔵ではアルコール添加に否定的な考えはなく、使い方の問題だと思います。
悪いイメージだけが独り歩きし、身体に悪いとか、悪酔いするとか質が悪い酒だ、とレッテルを貼る傾向にありますが、全くの誤解です。
悪いイメージが植えられたのは戦後の三倍醸造酒、そして工業用アルコールとの勘違いです。原料アルコールは合成ではなく、醗酵によって造られ精製されたものです。
「醸造アルコール」=「甲類焼酎」です。原料由来の味や香りはほぼ皆無で極めてクリアなものです、適量の添加アルコールは醪(もろみ)の中の各主成分を取り込むため、搾った酒は香味の高い酒質になります。
この技術が始まったのは江戸の初期頃と言われ、高い技術として確率された工程です。普通酒でも本醸造でもアルコール添加の使い方次第。
使用量と馴染ませるに要する時間を置くことが重要です。純米酒だから良い、というわけではないのです。それぞれに良さがあります。
先に述べたように普通アル添酒がIWC2014で頂点に立っています。皮肉なもので、受賞後からは注文の電話が鳴りやまなかったそうです。
フランス日本酒品評会Kuramasterの審査員が研修のため、2020年に当蔵を訪れました。その際に当蔵のアル添酒を利き、純米酒と遜色なく堪能して頂き、感動しておられました。
彼らからは大変勉強になったと言っていただけたことは誇りです。「純米酒しか呑まない!」という方も、是非一度、丁寧に醸された「アル添酒」を手に取ってみては如何でしょうか。


槽(ふね)による搾りについて

現在殆どが『ヤブタ式』という自動醪圧搾機で搾られていますが、
当蔵は昔ながらの槽(ふね)で搾っています。飛騨地域で現在でも使用しているのは当蔵のみとなりました。
当蔵のものは桜の木で作られています。酒袋(さかぶくろ)と言う、
柿渋で染められた木綿の太糸を粗目に織ったものをご存じの方も多いかと思われます。
現在では手入れがし易く、丈夫な化学繊維製の酒袋に醪(もろみ)を詰めて、槽の中へ積み上げていきます。
初めの内は自重でお酒が出てきます。この槽で搾った場合、ヤブタ式とは違い、最初から透明なお酒は出てきません。
袋の布目からきめ細かい醪が染み出てくるので、淡く濁ったような状態です。細かい醪は時間と共に下層に貯まり、
これを『澱(おり)』と言います。ここが「おり酒」になります。

↑ PAGE TOP

熟成に対する考え方

当蔵は昔ながらの手作りを守る熟成古酒(じゅくせいこしゅ)の専門蔵ですが、貯蔵年数に対するこだわりはありません。
年数が経過すればするほど品質が良くなる訳ではなく、個々の酒質によって異なる熟成のピーク(飲み頃)があり、
それを暫く(数年以上)保った後は少しずつ衰えて行くものと考えています。
(これはワインについても同じと考えます。長期貯蔵の箔はつきますし、話題にもなりますが、飲み頃はすでに過ぎていると考えます。)
また瓶詰した商品は飲み頃を見極め、瓶詰しておりますので、長期保存してより良くなることはありません。
当蔵は大きなタンクにて貯蔵熟成させます。瓶詰したものは容量に対して表面積が大きくなります。
周囲の温度変化などの影響を非常に受けやすくなりますので、瓶熟成は期待できません。
負の影響が勝ると思います。(飲めなくなる訳ではありません)
裏ラベルには製造年月記載がありますが、こちらは酒税法により、瓶詰した年月を記載することが義務付けられています。
当蔵では独自にワイン同じように醸造年度も記載しています。

↑ PAGE TOP

日本酒雑学

味わい・色調について

手作り少量生産のお酒は農産物と同じで同一銘柄でも醸造年度、出荷時期などにより、味わい・色調が違うのが普通です。
工業製品のように同じ銘柄なら、いつでも同じ味ということはありません。
勿論、かけ離れた味わいになることはありません。
また、熟成古酒ですから新種の無色透明とは違い、薄く色づいています。(メイラード反応によるもの)
味わいと共に美しい琥珀色もお楽しみください。

飲み方・器ついて

熟成古酒は燗上がり(温めることで味わいが増す、味がのること)するのも特徴です。お冷でもお燗でも状況に応じてお楽しみいただけます。
原酒はアルコール度が高いため、温めると強く感じますので、冷蔵庫で冷たく冷やすことをお勧めします。
が、冷やしすぎは旨味が隠れてしまうので、ご注意ください。当蔵のようなコクの多いお酒はオンザロックのように水分が加わる飲み方はお勧めしません。
酒中のエキス分と水が短時間では上手く調和しないため、水っぽく感じるからです。
また、日本酒はテキーラのように一気に飲むお酒ではありません。少しずつ飲んでみてください。口の中に含んで、ゆっくり温めるように飲むと味わいが増します。
盃(杯)でも味わいは変わるものです。口の薄い器がお勧めです。ワイングラスも美味しく飲めます。



当蔵の試飲に使用しているグラス:木村硝子店 カルタグイノミ


お燗について

良い酒は冷やで飲む、などと言われたりしますが、それは端麗な酒質に限った場合で、
当蔵のコクの多い酒質はお燗すると燗上がりして、旨味がグッと引き出されます。
勿論冷やでも美味しいのですが、冷やではキリっとシャープなお酒は関することで甘みやコクなどの旨味が出ます。
冷やとお燗の味わいを比べるのも楽しいですね。お燗は徳利などに移して、湯銭が一番美味しく仕上がります。
簡易的には電子レンジ利用もあり得ますが、均一に温めることが難しいです。
お燗の温度はぬる燗、熱燗など様々お好みに合わせて調節してください。
好みは十人十色なので一概には言えませんが、38度前後のぬる燗がコメの旨味と上品な甘みが口中に広がり抜群に美味しいです。
また、”燗冷ましは美味しくない”と言われますが、それは品質の良くないお酒の場合で、しっかりとした造りの純米酒などは冷めかけも美味しいものです。

美味しい燗酒のコツ(他サイトへ移動します)→


保存について

日本酒には賞味期限はありませんが、容器に詰めたお酒は長期の保存には向きません。
熟成させるには大きなタンクにて熟成させます。瓶詰めは飲み頃を迎えたものを詰めています。瓶詰め後の熟成は期待できません。
また、瓶詰め後は表面積が大きくなるために外部の影響を受けやすくなります。これはお酒の劣化につながるものです。
なるべく早めにお召し上がりください。しばらく保存される場合は光の当たらない暗く温度変化の少ない場所においてください。
開封後は品質が変化しやすくなりますので、お早めにお召し上がりください。(ワインのようにすぐに変化してしまうものではありませんが、
開封後は汚染の確立が非常に高まります。汚染されなければ1ケ月位は問題ありません。)

日本酒度などについて

お酒の甘辛などの指標として、日本酒度、酸度が表示されているものが多いですが、これらは杜氏が醪(もろみ)を管理するための指標です。
また、甘辛は官能による判断であり、日本酒度は比重に対応する値であって、必ずしも一致するものではありません。
当蔵では原料米の特徴を出すことが重要で数値を揃える必要はないと考えておりますし、特に熟成古酒の味わいとは合致しませんので、数値は非公開とさせていただきます。
お酒の味を、または食品の味を数値化したり、ランク分けしたりするのは、一つの見方としては有りだと思いますが、それだけに頼ってしまうのは余りにも乱暴なことだと思います。
それだけが先歩きしてしまっている昨今、特に日本では顕著なのではないかと苦慮しご自身に忠実に味わって頂きたいと思ってやみません。

お料理とのマッチングについて

最近、「このお酒はどんなお料理と合いますか?」という質問を多く受けるようになりました。
ざっくり言えば、どんなお料理とも合います。ワインやビールなどとお刺身は生臭みが感じられ、日本酒が良いです。
当蔵のお酒のようにコクがあるお酒は味の濃い、コクのあるお料理とも大変よく合います。
天ぷら、フライ、ステーキ、アユの塩焼き、山菜、黒造りなど、チーズやナッツも手軽で良いです。
ワインと比べて日本酒は合わせにくい食材は少なく、ワインほどお料理をシビアに選びませんが、
【マッチング】というのはお料理に一つ要素が加わったり減ったりするだけで大きく変わってしまうものです。
飲むお酒の温度でも変わってきます。つまり極めてプロフェッショナルな領域なのです。
例えば、「原酒ひだ正宗」はプレーンなパンナコッタとマリアージュ(組み合わせると、お互いの香りや味、余韻などを引き立て合って、それぞれの魅力がより深まること)しますが、そこにジャムが加わるだけで合わなくなってしまうように繊細なものです。
我々醸造化にできるのはお酒の飲み方までです。具体的に知りたい方は、シェフやソムリエなどの専門家にご相談ください。

↑ PAGE TOP

コーシャ認証について

コーシャフードとは
ユダヤ教徒が食べてもよいとされる「清浄な食品」のこと。
ユダヤ教の聖典には食べてもよい食品、食べてはいけない食品が記されており、
敬虔なユダヤ教徒は、3000年前の昔からその規律を守って生活しています。
コーシャ認定制度は、スーパーマーケットに代表される消費市場が拡大し
販売される商品数が膨大になるにつれて、それぞれの商品の生産過程や含有物が複雑になり、
ユダヤ教徒が清浄な食品を安心して手に入れるためのコーシャ認定の需要が高まりました。
イスラム教のハラルフードと異なり、ユダヤ教ではアルコールの消費を禁じてはいません。
日本における知名度はハラルに比べ劣りますが、
コーシャ食品はいまや米国をはじめとする世界の食品市場で中心的役割を担っております。
当蔵では純米酒”山ひだ”3銘柄の取得を致しました。(毎年、ラビがチェックに来訪します。)

↑ PAGE TOP

品評会について

当蔵は品評会出品、受賞に対し、こだわりや執着はありません。当蔵のお酒が大好き、と思ってくれるお客様がみえることが大事と考えるからです。
品評会で出品すること自体が、小規模な蔵にとってはエントリーに必要な高額経費や大量なお酒の提供、、部門そのものがなかったりと、極めてハードルが高いことが殆どです。
また、品評会というものは大衆に受ける酒質が評価され、個性的なものは敬遠される傾向にあります。特に国内では顕著です。
日本酒の品評会は昨今はブームに乗り、海外各国で催されておりますが、日本からの諸先生方が指導に赴くため、個性的なものを好む国であっても、
残念なことに、日本国内品評会と同様の傾向が見受けられるようになりました。
とはいえ、星の数ほどある銘柄から当蔵のお酒を選んで頂く一つの目安として、出品しています。受賞したことは喜ばしいことであり、ここに列記します。
詳しくは各銘柄のページでご確認ください。
◆IWC 
◆KuraMaster
◆ミラノ酒チャレンジ など


↑ PAGE TOP

世界へ

日本酒への世界からの注目度は相変わらず色褪せません。
ワインと同じように食事と一緒に楽しむ「食中酒」であり、銘柄ごとに個性豊かな味と香りが楽しめ、和食は勿論のこと、
様々な外国の料理とマッチするからでしょうか?
外国の方は自分の味覚を研ぎ澄まし、味わっていかれる方が多く見受けられます。
飛騨高山というお酒の聖地を知ってか知らずか、当蔵にも日本全国を歩き回っている外国のバイヤーさんが直接お見えにり、試飲、納得され輸出の契約を結んだりしています。
小さな蔵故に大きな取引が出来ずに立ち消えになってしまうこともしばしばありますが、確固たる手応えを感じています。
特に、2018年フランス開催のJaponisumes2018の酒蔵巡り企画24蔵枠の1蔵に選ばれたり、
フランスの日本酒品評会KuraMaster審査員の日本研修会の1蔵に指定されたり、大きな自信になっています。
日本国内ではどんどん日本酒消費量が減り、現在ではピークであった昭和48年の3割以下です。
それに追い打ちをかける出来事が3年も続き、当蔵に限らず、酒造蔵の存続の危機が差し迫ってます。
ここは黒船来航の恩恵に授かりたいものです。
   

↑ PAGE TOP

プロフィール

江戸末期1839年創業の川尻酒造場の7代目の店主”かめ”です。
川尻酒造場のお酒の設計から店頭接客まで全てこなしてます。
日本酒、酒全般の知識は豊富。アイデアも豊富。ただ先立つ物がないので
形に出来ない(T_T)。職人気質なので接客は不愛想です(-"-)。

川尻酒造場に宿る精霊やよ。
現7代目当主のお嬢さんに
描いてもらったんや。
やっとで
みんなに見てもらえるように
なって、嬉しいよ。
ボクから
ここの旬な話題や
日本酒についてのあれこれを
ブログやSNSで
発信しとるで
よろしくね。

↑ PAGE TOP